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ランス9のパトハン。
ただし未プレイです。聞いたネタバレ情報からいろいろ想像してみた。
未プレイだけどネタバレ情報ありの内容なのでお気を付け下さいませ。
詳細違うところもあると思いますがスルーしていただけると有難く。
はよ買えと。


取りあえず途中までー。







 艶やかな漆黒の髪。それは昔、腰まで届くほどの長さだったと言う。夜の帳のような彼女の髪を、男の母は大層好んでいて、暇さえあれば楽しげに梳かしていたと聞いた。
 今は肩につくか否かくらいに切られていて、その長さを想像すると如何にも勿体ないと思っていたが、綺麗な事には変わりがない。もっとも野宿が多いここ最近では手入れする暇もなく、もともとそこまで容姿に神経質ではなかったから、少しばかり埃っぽかった。久々に宿を取って旅の汚れを落として一息ついて、彼女の髪のような闇が辺りを染める頃。ランプ一つで照らされる部屋で、男は目の前に座る彼女の髪に櫛を入れていた。

 「短いから梳かしてもあんまり変わらないだろうに」

 普段はその細い肩に鉄の手と呼ばれるマニピュレーターを付けているが、今は外していて首筋があらわだ。無防備に背を晒す事は男を信頼しているに他ならず、男は楽しげに彼女の髪を梳かす。

 「何言ってんだ、せっかく御袋が遺してくれたもんだ。使わないと勿体ないだろ」
 「そりゃまあ、そうだけど……」
 「それに、こんな小さくて可愛らしいので俺の髪を梳かすのはなんか気が引けるしなあ。すぐ歯を折っちまいそうだ」

 男の手に握られている彼の母の形見は素朴な作りだが、確かに可愛らしく、屈強な体格を持つ男にはいかにも似合わない。鞘に納められていると小刀のような見目の櫛は、大きな厚い手からするとまるで玩具のようにも見える。それを意外なほどの繊細さで扱う様は不思議な光景でもあった。

 「大丈夫じゃない? あんたの髪だって真っ直ぐで結構さらさらしてるじゃない。パエリナはくせっ毛で短いって言ってたけど。そうだ、あたしがあんたの髪を梳いてあげよっか?」

 「いいからいいから。御袋が俺に、ハンティのためにって遺したんだからハンティに使うのが一番なんだよ。短くても長くても関係ないって」

 そこまで言うと、彼女、ハンティもため息一つついて肩の力を抜いた。さらさらと、男は髪を梳る。少し前まで慌ただしかった日々が嘘のように穏やかだ。もちろん、二人は今もそうのんびりとはしていられない状況の中にいるのだが、それでも休むときにはしっかり休むものだと思っている。
 何より、こうしている時間がとても愛しい。
 幼い時からハンティは、男の守り役としてずっと傍にいた。幼くして失った母のかわりに育ててくれた。それだけ長い時を共に過ごしていたが、踏み込めない一線、というものを感じてはいた。
 それは彼女が悠久の時を生きる者である孤独とでもいうのか、ただの人間である男との明らかな違いであり、彼女の恐れでもあり諦めでもあった。その一線は越えてはならないと、ハンティは長い時の中でほとんど無意識に思い込んでいた節がある。

 けれど男からするとそれは小さい事だった。我ながら酷いという自覚は男にある。しかし、とてつもなく重く、容易なものではないと感じ取るものの、やはり男には小さい事だった。
 今、この時を共有できる一瞬の価値。それが男にとっては何よりも得難いものだからだ。
 長く生きる彼女にとって、男との時間は本当に一瞬のものだろう。そうと分かっていて男は時間を共にすることを願う。残して去っていくと分かっていながら、最後まで傍にいてほしいと願っている。残酷だ。

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