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サイトはじめて間もない頃に書き始めた話です。
あと3話ほどありますが、これも結局書き終わらなかった……orz

解放軍ドウム。トゥエンティーとチクの話。
トゥエンティーは結局どういう存在だったのか、人によって解釈が違う気がします。
人造人間の中に生まれた『別の何か』がいったいなんだったのか。





 解放軍ドウム。



 君主がかわり、その数年後に有能な軍師をむかえ、ドウムは著しい進攻を遂げている。
 そんな戦乱の中でのある日の事だった。





 「状況はどうだ?」

 机の上にある書類に目をとおしながら、現君主は目の前にいる小柄な軍師に問いた。

 「今のところ、シリニーグと睨みあいですね。魔王軍は今、東側の国を潰しにかかっていますから、矛先が向くのはあと半年は先と見ていいでしょう。その間にこちらはシリニーグを掌握すれば、国力では負けません。もしくは、虚をついて、奇襲を魔王軍にしかける手もあります。あまり拡大させても厄介ですからね」

 軍師はその頭の形に切った短い赤い髪を軽くゆする。
 元新生魔王軍軍師、チク。先代君主の次男でもある。
 魔王軍の強さは身をもって知っているから、どうしても気になる。

 「ふん」

 軍師の前で椅子に深く腰掛けている男。
 少し長めの、茶味がかった赤毛の髪に赤い瞳。そうして人とは少し異なる肌の色。
 解放軍現君主、トゥエンティー。
 彼は、元君主ガイザンによって創られた、人造人間である。

 「あの飼い犬なんかにかまっている暇はない。さっさとかたをつける」

 そういって椅子から立ちあがり、部屋を出て行こうとする。

 「トゥエンティー!」

 慌てて軍師の青年が追いかける。

 「さっさとって、この間ハネーシャとやりあったばかりでしょう!まだ被害が残ったままだし、徴兵もしてません、兵士達も疲労しています!せめて準備が整うまで半月はまっていただかないと!」

 「知らん」

 そのチクの訴えをトゥエンティーは一蹴した。

 「し、らん……って!!」

 思わず声が上擦る。

 「人間が疲労していようが何だろうが関係ない。要は戦闘で勝てればいい。そのための駒だろう。人間は」

 「………………っ!」

 冷たい眼光。

 事も無げに、はっきりと言い捨てる。

 「……あなたが」

 一度、息をのむ。

 「……あなたが、人間を憎んでいるのは分かります。ですが、これは戦争です。私情で戦っていては勝てません! 一人で戦っているのでは、ないんですから!!」

 親しんだその顔で、刃のような言葉を吐かれる。チクは胸元がきつく締め上げられる思いをこらえながら、絞り出すように声をだす。
 その顔。
 自分の─────母親。
 トゥエンティーは、彼の母親である、ミナヨの遺伝子をベースに創り上げられたのである。

 「……知ったふうな口を」

 その冷たい表情が、瞬時に蔑みに染められ、嫌悪の声が漏れる。

 「では聞こう。今、多くの者達が戦っている中、私情で戦っていない奴らがどこにいる? 特に、人間どもは欲望にまみれ、他の者を蹴落とすことなぞに罪の意識すら感じていない。この世界を自分達のものだと疑いもせず、横暴に、荒しまわっているだけだろう。それこそ、私情で戦っているとはいわないのか?」

 えぐられる。
 この男の言うことに、否定ができない自分がいる。
 けれども。確かにそうかもしれないけれど、でも。

 「貴様とて同じだろう」

 「……俺は!」

 「違うとでも言うのか?」

 「………………っ」

 チクは歯を噛み締める。

 正論を並べ立てても、そんなものは通用しない。確かに今の世は、己の心のままに戦っている者達ばかりだ。そして、ある意味それが正しいとも言える。
 けれど、それは場合によりけりだ。これが嫌いだから、そこを攻めるとかいうのは、子供のわがままと一緒だ。人間が憎いから、人間を滅ぼす。……それがトゥエンティーにとって己の心のままの、正しい事だ。
 しかし。だからといって。

 「………………」

 トゥエンティーは一瞥すると、部屋のドアを開け、再び歩きだす。かつん、かつんと、広く長い廊下に足音がやけに響く。
 外をみる。
 この国は、他の国と違った『科学』というものを使い、発展している。その裏で、その科学により、自然がどんどん失われていっている。人間の浅はかな自己満足により、全てが悲鳴を上げている。

 「………………」

 人間は。
 ────滅びるべきだ。





 《トゥエンティー》

 不意に、誰かが彼を呼んだ。

 「何だ」

 その相手が分かっているかのように、トゥエンティーは手首を胸元あたりまで軽く上げる。己の手首に専用の通信回路が埋め込まれてあり、会話ができるようになっている。

 《周りの、様子がおかしい》

 「何?」

 《人間達が一箇所に集まっている。ここを、目指しているようだ。熱反応多数。重火器所持。重甲戦車もあるな。明らかに武装をしている。過剰にな》

 「……ふん。最近おとなしくしていると思っていたが…そうか」

 報告を受け、トゥエンティーは呆れたような声をだす。

 「サーティーン。動けるか」

 《いつでも》

 サーティーン。

 それはトゥエンティーの前に造られた、トゥエンティーと同じ人造人間。
 だが、開発途中で人工感情装置が不安定な状態で一度逃亡していたため、他の戦闘兵とは異なり、人間の心を持ちあわせている、ガイザンに言わせれば、不完全な存在。

 「ならば入り口で奴等を排除してくれ。徹底的にな」

 《了解》

 無機質な会話。
 まるで、何でもないかのような、そんな冷たさ。

 「トゥエンティー!」

 もう一度、名をよばれた。
 振りかえれば、チクが置き去りにされた部屋から飛びだして、蒼白な顔をしている。

 「…今、何だって……?!」

 「………………」

 部屋は開け放たれていた。先ほどの会話は当然チクの耳にも聞こえた。

 「…サーティーンがでた。暴徒の排除だ」

 「暴徒って…!!!」

 言わずもかな。





 「クーデターだ」




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