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本日は十五夜です。
と言うことでネタが降ってきたので書きたいと。
愛邪のムロマチです。
カプ色はうっすいほのぼの。




 今夜は見事な満月。太陽の沈んだ暗闇の世界を煌々と照らすその月を肴に、宴会をしようと言い出したのは大蛇丸だ。元々、ムロマチは秋の満月に月見をする習慣がある。豊作を祈る意味合いも含めているので、特に農民の間には深く根付いた習慣だ。
 シンバは真っ先に賛成をし、しかしソルティは大蛇丸に酒が飲みたいだけだろうと呆れ、ヒロは我関せずであった。蓮撃もソルティと同じような考えで渋い顔をしており、不如帰は反対に無表情で側に仕えている。
 結局は、上の二人がやりたいやりたいと騒ぐのでなし崩しに月見をすることになってしまった。ただし、戦時中なので無駄な浪費を避けるため、宴会などと大きくせず、小ぢんまりとした席にすること、と軍師から釘を刺された。たまには静かに飲むのも良いかと大蛇丸は了承し、シンバは皆と何かできるのだったら何でも良いと言う。そんなわけで、急遽月見の席が作られることとなった。





 「しかし、不思議なものだな」
 月が一番良く見える城の一室で、ススキを飾り、月見団子を盆に盛り、芋や豆や栗なども一緒にそろえる。御神酒も供えた。
 空に浮かぶ月は夜闇を切り取ったように白く、くっきりとその姿を見せていた。おかげで辺りは灯火いらずと言わんばかりに明るく、この席でも火の一つも灯していなかった。
 大蛇丸はその月を眺めながら不如帰の酌を受けつつ呑んでいる。珍しく静かでゆっくりとした呑み様だった。シンバも酒を呑んでいるが、大蛇丸のものよりずっと軽いものだ。酒と甘い物の組み合わせは個人の好みもあるところだが、苦手な者も多い。しかしシンバは特に気にせず団子を食べていた。ソルティはどうやらあまり好きではないらしく、豆を主に食べている。蓮撃は酒は呑まずに食べるだけにしていた。
 そんな中、少し離れたところで月を見上げていたヒロがぽつりと言った。
 「何が?」
 それに答えたのはシンバだ。
 「いや、ムロマチ人と言うのは不思議だと思ってな。たかだか月が満月だからと、こんな風に集まって酒を呑む習慣がある。他にも紅葉が綺麗だからと言って紅葉狩りだとか、桜が見事だからと花見の宴会をするとか、何かしら風景を愛でたり、些細な出来事で集まったりするだろう? 私のところじゃそんなことなかったぞ」
 「そうなんだ」
 「確かにそうですね。僕もムロマチ出身ではないから最初は驚いたけれど」
 違う大陸出身であるソルティもヒロに賛同する。シンバは昔は一人で暮らしていたが、風景を愛でる習慣はあった。
 「ムロマチ人てのは、四季を楽しむのさ。ムロマチ自体が季節の移り変わりが顕著だろ? だから、その変わり様をただ過ごすだけじゃ勿体無いってな、その時期にしか見れないものを見て楽しむ粋ってのがあるのさ」
 大蛇丸が楽しげに酒の注がれた杯を月に掲げる。ゆれる水面に歪む月が映っていた。
 「左様。四季に限らず、自然がもたらす事象も楽しみますな。雨が降ればその雨音だけの世界に耳を澄ませ、雪が降れば白銀の地と無音の世界を楽しむ。心静かに身を置くだけで、ふと、見えないものが見えてくることもありましょう」
 大蛇丸の言葉に補足するように蓮撃が言う。言いながら、遠く聞こえる虫の音に耳を傾けている様でもあった。
 「お前が言うと難くなるんだよ。要は、せっかく生きてるんだから周りの全部を楽しめってことさ! 勿体ねぇだろ? 今日だって月が綺麗で風も気持ちよくて美味い酒もある! だったら楽しまなきゃなぁ!」
 「少々引っ掛かるものも感じますが、貴方にしては良いことを言う」
 「俺にしてはって何だ俺にしてはって」
 そんなやり取りに、ヒロは、ふっ、と笑みを零す。
 「貴様と似たようなことをサトーも言っていたぞ」
 「ほー」
 「まだネウガードにいた頃だがな。あいつが今日はムロマチでいう月見の日だとか言ったことがあるんだ。でもネウガードじゃ月はここと違って赤く見える」
 「赤? 何で?」
 そこにいた一同がシンバの言葉と同じ疑問を持ってヒロを見た。
 「詳しくは分からんが、一説によれば魔力の影響らしい。ネウガードは魔族の国で、おまけに私の父様がいた。人間でも魔力が強い奴はいるが、一部だけだろう? 魔族は皆、生まれながらにある程度の魔力を持っている。他のどこよりも魔力が強く濃いのさ。それが大気にも影響を及ぼして、月が赤く見えるらしい。国境に行けばだんだん薄くなるが」
 「なるほど」
 「それじゃ、エルフの国でもそうなのかなぁ」
 「いや、エルフと魔族じゃ魔力の性質そのものが違うから、赤くは見えないんじゃないか? ここと同じように黄色っぽいかもしれないし、もしかしたら青く見えるかも知れん」
 「青い月かぁ、見てみたいなぁ」
 「実際はどうだか知らんがな。まぁ話を戻すが、赤い月を見て宴会、というのは、私は赤い月が当たり前だったから気にならなかったんだが、人間には少し抵抗があったみたいでな。けれど、せっかくだからとやったことがある」
 「赤い月ならムロマチの酒よりツェンバーやトータスブルグのワインが合いそうだなぁ」
 「確かに」
 大蛇丸は酒を舐めながら、ソルティは月を見上げながら言った。
 「その時にな、あいつが貴様と似たようなことを言ったんだ。『ここでしか見れないんなら、それを楽しまない手はないよな』とな。ただの宴会好きかと思っていたが、ムロマチ人の気質みたいなものなんだな」
 「それもありそうですが、貴方が先に言ったように、サトーさん自身の性格もありそうですけどね」
 妙に納得したヒロに、ソルティが笑った。確かに、あの屈託ない男ならば、ここにいる酒好きの男と同じように皆で騒ぐのが元から好きだ、と言う一因もあるだろう。
 「そのサトーはどうしてんだ?」
 「今は他国の情報を集めに出ている。まだしばらくは戻ってこないだろうな」
 「そりゃ寂しいだろ」
 「やかましいぞ」
 含みのある笑みを浮かべる大蛇丸にヒロは冷ややかに突っぱねた。
 「じゃあ、お月見している余裕はないかな」
 自分たちも、そうそうのんびりはしていられない立場だが、一息つく時間くらいはある。だが、他国に潜入している身では、落ち着いてもいられないだろう。
 「いえ、他国によって月の出方にも差はありますが、今日のような月の明るい夜には、忍びは仕事を致しませんから」
 「あ、明るすぎて見つかりやすいから?」
 今まで控えめに仕えていた不如帰が、やはり控えめに言葉を挟んできた。
 「シンバ殿の言うとおりです。ですからおそらく、あやつがいるところでも月が明るいならば、大人しくしているでしょう。もしかしたらどこぞで月見をしているやも知れません」
 「じゃあ、離れているところだけど、見ている月は一緒だから、一緒に月見をしていることになるかな」
 「お、うまいこと言うな。じゃあ、離れている所にいるあいつも含めて、乾杯しなおすか」
 「悪くはないな」
 シンバの言葉に大蛇丸が笑って音頭を取る。ヒロも珍しくその乾杯に杯を軽く掲げた。遠き地にいる仲間を思って。






ムロマチに『十五夜』と言う言葉があるのか分からないのでぼかしました。でも月見をする習慣はありそうだよな、と。
日本人は四季を楽しみすぎる。

因みにネウガードの月が赤い、と言うのは勝手な設定です。オフィシャルで書いてあったわけじゃないので本気にしないで下され。

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