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某暇さんのソウルズアナザーを読んでいて突然頭に浮かんだネタ。
取り合えずクラフロ+αです。
しかしあくまで『フェイク』。
暇さんの書かれているソウルズアナザーとは関係ございません。
クラフロが苦手な方、またはソウルズ登場キャラの一人が実は二人の子ども、というネタが苦手な方は、続きを読まれない方が賢明です。ごめんなさい。

一番に謝るべき暇さんには土下座します。
すみません。


 信じられない、否、信じたくない、光景だった。


 目の前に広がるのは、かつて陽気に栄えていたであろう街並みが、燃え盛る炎と無数の屍に埋め尽くされている姿だった。戦う者、戦わぬ者、男も女も、老人も子どもも関係なく、あるのは等しく物言わぬ屍。これが、現実のものだと彼女は信じ難かった。
 まるで虐殺だ。
 帝国や皇国、様々な思惑を秘めた戦争が起きているのは知っていた。彼女の友人達もそれに参戦しているのも知っていた。だが、彼女はそこへすぐに駆けつけることができる状況ではなく、ようやくこうして辿り着けたというのに、この有り様は目を疑いたくなった。
 国や種族の戦争の痕ではない。抗い難い脅威ともいえるモンスターの仕業だった。立ち尽くす自分に気がついた異形のモノが襲い掛かり、ほとんど条件反射でかわしたが、鋭い爪が皮膚を切り裂いた。その痛みに夢でもまやかしでもないと悟る。歯を食い縛り、湧き上がる言い表すことのできない憤りをぶつけるように、全体重と勢いをこめて拳を叩き込む。血反吐を撒き散らし、体勢が崩れたところへ、すかさず追い討ちをかける。とり憑かれたように連打を食らわせ、終いにはその巨体をふっ飛ばし、街の石壁へと叩き付けた。
 大きく息をし、何度も肩を上下させ、胸はふいごのようにあえぐ。眩暈がする。この状況は、なに。
 「あれ? まだ生きている人がいたんだ」
 あまりにもこの世界に似つかわしくない、素っ頓狂な声が耳に届いた。振り返り、声の出所を探す。その声の主は全壊と炎を免れた建物の上にいた。
 すでに彼女は混乱していたが、それ以上に声の主の登場に、それこそ声も上げれぬほどに愕然とした。
 柔らかな薄いすみれ色の髪に大きな新緑の瞳。身軽な服装に、明るさを秘めた優しい顔立ち。髪の色こそは違うが、その声と顔立ちには覚えがあった。あまりにも馴染みがあった。
 「…………あれれ? もしかして……」
 声の主は彼女の姿をじっと見つめてから、目を見開いた。驚いたようだ。表情を僅かに曇らせ、それから困ったように笑う。
 「……やだなぁ、まさか、こんな形で逢えるなんて。ガラハドに同級生だったって聞いてたけど、どこにいるかまでは知らなかったからなぁ」
 その言葉に彼女は確信を強めていく。声の主の髪の色は本当は茶色のはずだ。聞いた話では、昔、事情があって髪を染めていた時期があったそうだ。コリアスティーンにいた頃は地毛に戻していた。
 陽気で、爛漫で、少し人の話を聞かないところもあるけれど、料理の好きなにぎやかな人だった。曲がったことが嫌いで、そのために愛する人と道を違えたこともあった。けれど、とても一途だった。
 「……ここで、なにを、しているの」
 絞り出すように問いかける。
 「やだ、わたしのこと、分かるの? 最後に逢ったのってまだちっちゃかった頃なのに! あはは、嬉しいな」
 「……なにをしてるのって、聞いてるの!」
 声の主の返答に、彼女は奈落の底に突き落とされる気分になる。
 「んー……。やっぱり、怒るよね。でもわたし、今の状況、後悔はしてないんだ。だから誰にも謝るつもりはなかったけど」
 「………………」
 「ヘレネには、謝るよ。────ごめんね」
その喋り方は記憶と違わず、懐かしい思い出を蘇らせる。それが身を切られるほど痛かった。
 「謝ってどうだってわけじゃないけど、ね」
 「……これを、やったのは」
 「うん、わたしたち」
 よどみない即答に泣きそうに顔が歪んだ。眉を寄せ、奥歯を噛み締める。
 声の主は相変わらず微笑んでいる。その隣にいた夕焼けのような髪の男にそっと寄り添った。風にあおられ、なびくその様は、周りの炎に同化しているようだった。感情の見えない片目で男は彼女を見下ろしている。
 彼女とよく似た、深い蒼色の左目。


 同じだ。
 幼い頃、あの人がよく話してくれた、姿も知らぬ自分の、


 「──────………………ッ!!」
 炎が目に痛い。空気を焼く熱が喉をひりつかせ肺も焼くようだった。全身を震わせて、信じ難い光景を否定したかった。
 「………………どうして…………ッ!! なんでよ……!!」
 「………………」







 「──────お母さん……お父さん………………ッ!!!」







 二人は黙って佇んでいた。

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