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ネタのメモ。
永久を生きると言われるエルフの女性と、
彼女が知る人間の少女の曾孫のお話

「……貴方は」
「………………」
「……お墓参り、ですか」
「……ええ。祖父と、祖母の」
「そう、ですか。…………」
「祖父と祖母は、知っている。幼い自分の世話をしてくれたこともあった。会う度に様々な話をしてくれた。……そこに眠る曾祖母の、ことも」
「………………」
「しかし私にとって、曾祖母とは祖父母の話でしか聞かぬ、姿も知らぬ何の思い出もない存在だ。……貴方と違って」
「……そう、ですね」
「……聞いてもいいだろうか」
「何でしょう」
「貴方は、かつての仲間の墓参りをしているのか」
「……ええ」
「もう、曾祖母が死んで100年は経つ。だのに、か」
「ええ。……あの子は、誰かとおしゃべりすることが好きだったから。向こうで、たくさんの仲間達や、家族と楽しく過ごしているだろうけど、こちらの話も聞きたいだろうし、時折こうして訪れて、話しているのです」
「………………」
「……どうか、しましたか?」
「……あの子。あの子、か」
「………………」
「私にとって見も知らぬ曾祖母を、貴方は『あの子』と呼ぶ。私の知らぬことを知り、その目で私を見る。私よりも、ずっと若いその姿で」
「………………」
「前にも言ったが、あまり気持ちのよいものではない」
「……そう……ですか。すみません」
「何故謝る。貴方にとっては当然のことなのだろう。エルフは永久を生きる。故にその姿で多くの生死を見ることが当たり前なのだろう。だが、私の言うことは私にとって当たり前のことだ。私は、人間は100年ほどしか生きぬ。見ろ、貴方と初めて出会ったときよりも老いたこの姿を」
「………………」
「もう50年近く生きた。昔を思い出せば昨日のことのように感じるが、この先の50年、と思うととてつもなく長く感じる。それなのに、貴方達のように今のまま永久を生きるなど、想像もつかぬ。コレが、私達人間だ。……嫌悪、ではない。不確かなもの、理解できぬものへの据わりの悪い、違和感のようなものだろう」
「………………」
「貴方は、どうとも思わぬのか」
「どう、とは?」
「貴方は他のエルフよりも人間側に近い。人間との付き合いも深い。けれど貴方はエルフだ。幾度も誰かを見送り続けるのに、自分は老いもせず死なない。……どうとも、思わぬのか」
「………………」
「他のエルフと話したことがある。日常では人間と変わらぬ。だが、やはり人間とは明らかに違うモノを持っている。他の生きる種族より、草木や精霊に近く、人間でもごく一部の者しか聞こえぬ声を聞いているからか。何かが決定的に違うのだと、思った。だが貴方はエルフでありながら、人間と交わる。……私は、私の親しい者を見送ることになれば、悲しいと思うだろう。実際、あの戦争で幾人も見送った。……貴方は、どうなのだ」
「……私も、誰かを見送ることは悲しいです」
「悲しいだけか」
「……どういう意味ですか」
「ただ、悲しいだけか」
「………………」
「私は老いて寿命を全うする。そしてここに眠るだろう。あちらの世界が存在するならば、そこで貴方の言う話好きの曾祖母とも出会うやも知れぬな」
「………………」
「だが、貴方はこの先も何百年、何千年と生き続けるのだろう」
「………………」
「ここに、貴方の墓はない。この先も、この地でなくとも、私の子供たちが老いて死んだ後も、ずっと生き続ける。私たちは眠る。貴方は、眠らない」
「……そうですね」

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