のんびり気ままにGOC6攻略中。
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その左手は異形の姿
「姫さん姫さん姫さーん」 「何だ、人の名を連呼して」 「姫さんの左手って、魔力を基にして作ってるいわゆる義手だよな」 「そうだがそれがどうかしたか」 「ちょっと見せて」 「何?」 奇異で歪で いっそ恐ろしいほどの 「何なんだいったい」 「いや、何。義手だけど魔力を基にしてるからよく動くよな」 「まぁな」 「この手って感覚あんの?」 「ん?」 「俺が触ってるの、分かる?」 「分かるぞ。確かに義手だが、私の一部だ。これはもうほぼ私と一体化しているから切られれば多少は痛みを感じるかも知れんが、肉体を切られるほどではない」 体の一部だと言うのにその姿は肉体と不釣合いで 「………………」 「ん? 何だよ、姫さん」 「お前、よくまぁそんな気安く触れるな」 「え、何、身分違いだとか不敬だとか言うの? 今更」 「違う馬鹿者。…………普通はこんな異形の左手に触りたいとは思わんだろう」 死神の鎌を持つ手 魂を刈り取り殺める左手 「そりゃ確かにおっかねぇかもしらねぇけど、姫さんだろ」 「………………」 「姫さんの左手だろ」 燃え付けば死ぬまで消えぬ魔界の炎 それを放つ左手 あっさりと、何事でもないように 粗い肌の大きな右手が触れる 「──────この手を」 「あ?」 「この手を、こんな風にしたのは、人間だ」 「………………」 「お前と同じ、人間だぞ」 魔族というだけで 幼い子供の腕を切り落とした人間 あまりにもこの男は 当たり前のように触れてくるから 無性に 腹立たしくて だのに 「そうか」 一言呟いて、握り締める。 「左手」 「何だ」 「魔力で作ってんなら、どうして元の姿に似せなかったんだ?」 「──────」 あたたかくて大きな右手 「右手と同じふうに作れない、ってわけじゃねぇだろ。こうでかくて鋭くちゃ、普段でも色々面倒だし、姫さん面倒くさがりだしな」 「うるさいぞ」 「だのになんでこの姿のままなんだ?」 左手。 異形の左手。 「なあ、姫さん」 「………………」 「俺は人間だよ、俺は俺で、人間で」 「………………」 「姫さんは魔族で、人間に切られた左手、怖いナリのままでずっといて、これはもう姫さんの一部で」 左手。 自分の、痛みと、憎しみの、形。 傷は癒えても痕は残り 想いを解放しなければそれはずっとそのまま 痛みに慣れ順応しても それは無意識の楔として過去の幼い自分を思い出させる 忘れるな 忘れるな この腕を切り落としたのは無抵抗な子供に刃を振り下ろしたのは罵声を浴びせ踏み躙ったのは 人間だ 「それでも、いんじゃねぇのか」 この、男は 「………この手は」 「うん」 「おそらくずっとこのままだ」 「ああ」 「それでもいいのか」 「いいんじゃねぇの」 「何だその投げやりな言葉は」 「投げやりじゃねぇよ、ひでぇなぁ」 左手を離そうとしない 「この手をどうするのかは姫さんが決めることだろ。このままでいいんならいいんじゃねぇの。俺はこの手は嫌いじゃねぇよ」 「人間に切られた手なのにか」 「それは姫さんの都合だ。俺には関係ねぇよ。俺はアンタがアンタだから好きなだけで、この手だって見た目はおっかねぇし、できるんなら右手と同じようにすりゃ楽だろうになとは思うさ。でも、アンタがそうしないんならそのままでいいんだろ」 「──────お前は」 落とすように、笑って 「………酷い男だな」 「そりゃどうも」 屈託なく笑う 左手 異形の左手 過去の傷そのままに あたたかな大きい右手と 左手で 異形の左手を 握り締める PR |
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