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ネージュサイド続き。

これはシュウとネージュのお話ですよー。
異界の魂はおりませんよー。
オフィシャル無視ですよー。
ヴァラノワ小説から派生してますよー。



 「なんだい、嬢ちゃん、若先生の恋人かい?」
 「えっ」
 じっと家を見ていた彼女に、意地の悪いからかいを含めた笑顔で聞く。ほぼ不意打ちに近いそれに、彼女は瞬間的に顔を赤く染めてしまった。
 「なーるほどなぁ、若先生、いい年頃だってぇのに全然女っ気がないし、興味なさそうだったけど、そうかそうか。嬢ちゃんみたいなべっぴんさんの恋人がいりゃ、そりゃ他の女にゃ見向きもしねぇか」
 その反応に一人で納得したように腕を組み、しみじみと頷いた。男のその言葉に二の句が告げず、彼女は赤くなるしかなかったが、それでも何とか飲まれてしまいそうな恥かしさを堪え、ふるりと首を振った。
 「ち、違います、わ、私と彼はその、学園の同級生で……」
 こちらに来る前も、友人に多少なりともからかわれたけれど、ここまで恥かしくなかった。自分の親しい相手より、自分のまったく知らない、けれど彼の事をよく知る相手に言われるとどうしようもない恥かしさがあった。自分の秘密を、知らない人が知っているような心地の悪さにも似ている。
 「同級生? ああ、何とか言うエライ優れた子供ばっかを集めてるとかっていう、あの学校かい? 若先生もこの辺りじゃあ飛び抜けて頭はいいし腕もよかったんだけどなぁ。やっぱり大陸モンの壁は高かったんかねぇ」
 「………」
 顔の赤さが引いてゆき、彼女は俯いて口をつぐんだ。
 「でも、若先生にとっちゃ、いい経験だったんだろうなぁ。それに俺達にとってもよ」
 「え?」
 はじかれたように顔を上げた彼女を見て、男はにんまりと笑う。
 「なんつーか、一皮むけたってのか? 落ちて戻ってきたのに気負わねぇし腐れもしねぇでよ、それどころか一回り大きくなって帰って来た感じだったねぇ。子供の成長は早いけど、しみじみそれを感じたな。んでよ、今じゃそん時の経験とかも活かして村医者やってんのさ」
 「……村医者? あの人が、ですか?」
 「おお。この村にゃ医者がいなくてな。隣村の爺先生が巡回してくれてたんだけどよ。如何せん歳でなぁ。そしたら何よ、若先生、学校でちょいとばかし回復魔法も習ったとかで、勿体無いから爺先生がついでに魔法じゃなおせねぇ病気治す医療の勉強もしてみろとすすめてな。若先生、元々頭はいいからみるみる技術身につけてってなぁ。今じゃ『若先生』って呼ばれるくらい良い医者になったぜ」
 「………」
 男の話に驚いたのも束の間、いつの間にか彼女の口元は笑みに綻んでいた。
 学園にいた頃の彼は、確かに頭がよく成績は優秀だったがどこか窮屈そうにも思えた。自分自身でこりかためてしまっているようで、時折、辛そうに見えた。
 それでも彼女は彼の生真面目さには好意を感じていたし、共に過ごした学園での生活は大切な思い出だった。
 「……シュウ……」
 彼が学園を去る時、言った言葉。残していった微笑み。
 それを改めて思い出し、彼女は嬉しそうに彼の名を呟いた。

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